はじめに
2025年4月、トランプ政権の「Liberation Day(解放の日)」が世界を揺さぶりました。全輸入品に10%、中国やメキシコには25~145%の関税を一気に課し、株価は2日で10%暴落、6兆ドルの投資価値が吹き飛びました。私はこう考えます。トランプはリセッションを「いとわず」突き進んでいるのではないか。一方、財務長官のスコット・ベッセントは、この無謀な船をなんとか現実の岸に着けようと必死に舵を切っています。この構図が、2025年のアメリカ経済の鍵を握っていると感じます。
トランプの「リセッション上等」な姿勢
私の考えでは、トランプの政策は経済の短期的なダメージを「必要悪」と割り切っています。関税は輸入コストを押し上げ、ウォルマートの商品価格が10%上がるという話も出ています。消費者物価指数(CPI)が4~5%に跳ね上がり、企業収益はS&P500で10%減少するとエコノミストは警告しています。
しかし、トランプは動じません。「アメリカの製造業を復活させ、1兆ドルの貿易赤字をぶっ潰す」と息巻く彼の目は、2026年の中間選挙や支持基盤のブルーカラー層に向いています。
債務問題も同様です。36兆ドル(GDP比122%)の連邦債務と、2025年6月の債務上限「Xデー」が迫る中、トランプは「債務上限なんて撤廃しろ」と平然と発言しています(2024年12月、NBCインタビュー)。まるで、リセッションやデフォルトのリスクを「俺がなんとかする」と豪語するヒーロー気取りです。
私の見立てでは、彼はリセッションが起きても「バイデンやグローバリストのせい」と責任転嫁して、支持者を煽る戦略でしょう。実際、2024年選挙での306選挙人票の圧勝が、彼に「多少の混乱は許される」という自信を与えているように見えます。
ベッセントの「現実路線」奮闘
一方、ベッセントはトランプの「無謀」を抑えるブレーキ役です。ヘッジファンド出身の彼は、市場の信頼や国際関係を壊したくありません。関税を「交渉のレバレッジ」と呼び、145%の対中関税を「上限」として徐々に下げていく戦略を強調しています。日本やカナダには「柔軟に対応する」と約束し、トランプの「一律10%」を穏健化しようとしています。
株価暴落後、フロリダに飛んでトランプに「市場がパニックになっているからトーンを変えよう」と進言したエピソードは、彼の「火消し屋」ぶりを象徴しています。
ベッセントは債務問題にも真剣です。36兆ドルの債務を「危機的」と警告し、関税収入(年間4000億ドル見込み)や歳出削減で財政を補強するプランを推進しています。私の考えでは、彼はリセッションを「意図」していません。CNBCで「経済は好調」「リセッションは織り込む必要ない」と強弁する姿は、投資家をなだめ、トランプの過激さを「ソフトランディング」させようとする苦労の跡です。
しかし、市場は半信半疑です。JPMorganのジェイミー・ダイモンは「リセッションはほぼ確実」と警告していますし、投資家の不信感は最大限に高まっています。
パウエルとバイデンの「失敗」が火種
この構図を複雑にしているのが、パウエルとバイデンの過去のミスです。私の見方では、FRBのパウエルが2021~2022年に「インフレは一時的」と誤判断し、ゼロ金利を長く続けたのが大失敗でした。M2マネーサプライが20%増加し、2022年にCPIが9.1%まで跳ね上がりました。その後、急激な利上げ(5.25%)で債務の利払いコストが8810億ドルに急増しています。
トランプの関税がインフレを再加速させれば、FRBはさらに利上げを迫られ、リセッションの火種が燃え上がる恐れがあります。
バイデンも同様です。1.9兆ドルのアメリカ救済計画(ARP)は、コロナ回復中の経済にガソリンを注ぎ、インフレを悪化させました(2021年末で7.2%)。債務は8.5兆ドル増加し、債務上限交渉は泥沼化しました。
トランプの関税や減税が同じ道をたどるリスクがありますが、ベッセントは「バイデンのバラマキとは違う」と歳出削減を掲げています。私の考えでは、パウエルとバイデンの「失敗」が、トランプの無謀とベッセントの現実路線のバトルをさらに複雑にしています。
債務不履行リスクとのリンク
私の仮説で最も気になるのは、債務不履行リスクです。2025年6月の債務上限交渉がこじれれば、市場は再びパニックに陥るでしょう。2023年の債務上限危機でS&P500が5%下落したことを考えると、デフォルトの兆候だけで株や債券が売られる可能性があります。
トランプは「デフォルトも交渉の道具」と強気ですが、ベッセントは「私の下でデフォルトは絶対ない」と断言しています。彼が議会や投資家をどう説得するかが、リセッションの深さを左右すると思います。
もしリセッションが起きたら、トランプは「外国やエリートのせい」と叫び、ベッセントは「一時的な調整」と火消しに走るでしょう。しかし、関税の規模(輸入品の20%に影響、コスト1兆ドル超)や中国の報復関税、EUのWTO提訴を考えれば、ベッセントの努力が届かない可能性も高いです。リセッションは「意図せずとも」現実になりそうです。
結論:トランプの無謀とベッセントの綱渡り
私の考えをまとめると、トランプは「アメリカ第一」のビジョンでリセッションをいとわず突き進んでいますが、ベッセントは市場や財政の現実を見据えて「ハードランディング」を避けようと奮闘中です。このバトルが2025年の経済を決めるでしょう。
トランプの関税は雇用や製造業を短期的に守るかもしれませんが、インフレや債務の重圧で経済が不安定になるリスクは大きいです。ベッセントの現実路線がどこまでトランプを制御できるか、私には半信半疑です。
読者の皆さんはどう思いますか? トランプの「大胆さ」はアメリカを救うのでしょうか、それともリセッションの引き金を引くのでしょうか。ベッセントの「火消し」が成功すると思いますか?